Japanese Short Story

Japanese Short Story 44

ヘビとイタチとネズミ ある家の中で、ヘビとイタチがケンカをしていました。いつもヘビにもイタチにもいじめられて、食べられているネズミたちは、そのケンカを見て、安心して穴から出てきました。ところが、ネズミたちを見たとたん、ヘビとイタチはケンカをやめて、そろってネズミに飛びかかりました。人間も同じことです。力のある人たちのケンカに首をつっこむ人は、その両方から攻められるのです。 Vocabulary List: With Furigana: ある家いえの中なかで、ヘビとイタチがケンカをしていました。 いつもヘビにもイタチにもいじめられて、 食たべられているネズミたちは、そのケンカを見みて、 安心あんしんして穴あなから出でてきました。 ところが、ネズミたちを見みたとたん、 ヘビとイタチはケンカをやめて、そろってネズミに飛とびかかりました。 人間にんげんも同おなじことです。 力ちからのある人ひとたちのケンカに首くびをつっこむ人ひとは、 その両りょう方ほうから攻せめられるのです。

Japanese Short Story 43

お腹がすいたイヌたち お腹をすかせたイヌたちが、川に浮かんだけものの皮を見つけました。そこまで泳いで行くのは大変なので、イヌたちは相談して、「みんなでこの川の水を飲んでしまおう。そうすれば歩いて楽に行ける」しかし、イヌたちはあんまり水を飲み過ぎて、皮を手に入れる前に、みんな死んでしまいました。人間でも、欲に目がくらんで危険なことをして、欲しいものを手に入れる前に、とんでもないことになってしまう人がいます。 Vocabulary List: With Furigana: お腹なかをすかせたイヌたちが、川かわに浮うかんだけものの皮かわを見みつけました。 そこまで泳およいで行いくのは大変たいへんなので、イヌたちは相談そうだんして、 「みんなでこの川かわの水みずを飲のんでしまおう。そうすれば歩あるいて楽らくに行いける」 しかし、イヌたちはあんまり水みずを飲のみ過すぎて、 皮かわを手てに入いれる前まえに、みんな死しんでしまいました。 人間にんげんでも、欲よくに目めがくらんで危き険けんなことをして、 欲ほしいものを手てに入いれる前まえに、とんでもないことになってしまう人ひとがいます。

Japanese Short Story 42

猟りょう師しとライオン 弓の上手な猟師が、山に狩りに行きました。動物たちは、みんな逃げました。でもライオンだけが、猟師に立ち向かってきました。猟師は一本の矢を放って、ライオンに怪我をさせて言いました。「見ろ、今のは俺の家来だぞ。今度は、俺が行くからな」傷ついたライオンは、逃げ出しました。キツネがそれを見て、「怖がることはありませんよ。逃げなくても大丈夫です」と、言いますと、ライオンは、「そう言われても、聞くわけにはいかないよ。家来でさえこんなに痛いのだから、本人が来たらどうすればいいんだ」大丈夫だと言われても、少しでも危険だと感じたら全力で逃げることが賢い選択です。 Vocabulary List: With Furigana: 弓ゆみの上じょう手ずな猟りょう師しが、山やまに狩かりに行いきました。 動物どうぶつたちは、みんな逃にげました。 でもライオンだけが、猟りょう師しに立たち向むかってきました。 猟りょう師しは一本いっぽんの矢やを放はなって、ライオンに怪我けがをさせて言いいました。 「見みろ、今いまのは俺おれの家け来らいだぞ。今こん度どは、俺おれが行いくからな」 傷きずついたライオンは、逃にげ出だしました。 キツネがそれを見みて、 「怖こわがることはありませんよ。逃にげなくても大だい丈じょう夫ぶです」 と、言いいますと、ライオンは、 「そう言いわれても、聞きくわけにはいかないよ。 家け来らいでさえこんなに痛いたいのだから、本人ほんにんが来きたらどうすればいいんだ」 大だい丈じょう夫ぶだと言いわれても、 少すこしでも危き険けんだと感かんじたら全ぜん力りょくで逃にげることが賢かしこい選択せんたくです。

Japanese Short Story 41

鍛冶屋とイヌ 鍛冶屋が、イヌを飼っていました。鍛冶屋がせっせと働いている間、イヌは眠っていました。でも、鍛冶屋が食事を始めると、イヌは主人の側に来て座るのでした。鍛冶屋は、イヌに骨を投げてやりながら、「しょうがない寝坊助イヌだなあ。私が腕を動かして鉄を叩いている時は眠っているくせに、私が口を動かすと、たちまち目を覚ますのだから」他の人の働きによって暮らしている寝坊助のなまけ者は、このイヌと同じです。 Vocabulary List: With Furigana: 鍛冶屋かじやが、イヌを飼かっていました。 鍛冶屋かじやがせっせと働はたらいている間あいだ、イヌは眠ねむっていました。 でも、鍛冶屋かじやが食しょく事じを始はじめると、イヌは主人しゅじんの側がわに来きて座すわるのでした。 鍛冶屋かじやは、イヌに骨ほねを投なげてやりながら、 「しょうがない寝坊ねぼ助すけイヌだなあ。 私わたしが腕うでを動うごかして鉄てつを叩たたいている時ときは眠ねむっているくせに、 私わたしが口くちを動うごかすと、たちまち目めを覚さますのだから」 他ほかの人ひとの働はたらきによって暮くらしている寝坊ねぼ助すけのなまけ者ものは、 このイヌと同おなじです。

Japanese Short Story 40

オンドリと宝石ほうせき オンドリがエサを探していて、とても大きくて立派な箱を見つけました。「もしかして、食べ物かな?」オンドリが箱を開けてみると、なんと素晴らしい宝石や金貨が、ぎっしり詰まっているのです。オンドリの見つけた箱は、宝箱だったのです。しかしオンドリは、つまらなさそうに、こう言いました。「なんとつまらないものを見つけたことか。俺にとってはたとえ世界中の宝石よりも、一粒の麦のほうが、よっぽど価値があるのに」このお話は、どんなに素晴らしいものでも、それを必要としない者には何の価値もないことを教えています。 Vocabulary List: With Furigana: オンドリがエサを探さがしていて、 とても大おおきくて立りっ派ぱな箱はこを見みつけました。 「もしかして、食たべ物ものかな?」 オンドリが箱はこを開あけてみると、 なんと素晴すばらしい宝石ほうせきや金きん貨かが、ぎっしり詰つまっているのです。 オンドリの見みつけた箱はこは、宝たから箱ばこだったのです。 しかしオンドリは、つまらなさそうに、こう言いいました。 「なんとつまらないものを見みつけたことか。 俺おれにとってはたとえ世せ界かい中ちゅうの宝石ほうせきよりも、 一粒ひとつぶの麦むぎのほうが、よっぽど価値かちがあるのに」 このお話はなしは、どんなに素晴すばらしいものでも、 それを必要ひつようとしない者ものには何なんの価値かちもないことを教おしえています。

Japanese Short Story 39

ごましお頭あたまの男おとこと女おんなたち 白髪が増えて、ごましお頭になった男が、二人の女と仲良くしていました。一人の女は若くて、もう一人は年寄りでした。年寄りの女は、自分よりも年下の男を恋人にするのは恥ずかしいと思って、男が遊びに来るたびに、ごましお頭から黒い毛ばかり、こっそり少しずつ抜くことにしました。一方、若い女は年寄りの恋人では体裁が悪いと思って、白髪だけをこっそり抜きました。こうして、代わる代わる白い毛と黒い毛を抜かれたために、とうとう男はツルツルのはげ頭になってしまいました。このように、何事でも気持ちが一つになっていないと、必ず困ったことが起こるものです。 Vocabulary List: With Furigana: 白しら髪がが増ふえて、ごましお頭あたまになった男おとこが、 二人ふたりの女おんなと仲なか良よくしていました。 一人ひとりの女おんなは若わかくて、もう一人ひとりは年とし寄よりでした。 年とし寄よりの女おんなは、自じ分ぶんよりも年下とししたの男おとこを恋人こいびとにするのは恥はずかしいと思おもって、 男おとこが遊あそびに来くるたびに、ごましお頭あたまから黒くろい毛けばかり、 こっそり少すこしずつ抜ぬくことにしました。 一方いっぽう、若わかい女おんなは年とし寄よりの恋人こいびとでは体裁ていさいが悪わるいと思おもって、 白しら髪がだけをこっそり抜ぬきました。 こうして、代かわる代がわる白しろい毛けと黒くろい毛けを抜ぬかれたために、 とうとう男おとこはツルツルのはげ頭あたまになってしまいました。 このように、何事なにごとでも気持きもちが一ひとつになっていないと、 必かならず困こまったことが起おこるものです。

Japanese Short Story 38

野や生せいのロバと飼かわれているロバ 野生のロバが、日のよく当たるまきばに飼われているロバを見て、側まで寄って行きました。「あなたは幸せですね。そんなによく太って、美味しそうな草が食べられて」野生のロバは、羨ましそうに言いました。ところが、その後で飼われたロバが重そうな荷物をつけて、ロバ引きにこん棒で殴られているのを見ると、「なーんだ。ちっとも羨ましくないや。美味しい草をどっさり食うために、あんなにひどい苦労をしてるんだから」このように、危ない目や苦しいことがある暮らしは、いくら良い暮らしでも、少しも羨ましいものとは言いません。 Vocabulary List: With Furigana: 野や生せいのロバが、日ひのよく当あたるまきばに飼かわれているロバを見みて、 側がわまで寄よって行いきました。 「あなたは幸しあわせですね。そんなによく太ふとって、 美味おいしそうな草くさが食たべられて」 野や生せいのロバは、羨うらやましそうに言いいました。 ところが、その後あとで飼かわれたロバが重おもそうな荷に物もつをつけて、 ロバ引びきにこん棒ぼうで殴なぐられているのを見みると、 「なーんだ。ちっとも羨うらやましくないや。 美味おいしい草くさをどっさり食くうために、あんなにひどい苦く労ろうをしてるんだから」 このように、危あぶない目めや苦くるしいことがある暮くらしは、 いくら良よい暮くらしでも、少すこしも羨うらやましいものとは言いいません。

Japanese Short Story 37

月つきの女め神がみと母親ははおや ある時、月の女神が母親に頼んで、体にぴったり合う着物を作って欲しいと言いました。すると、母親は言いました。「どうして、ぴったりする着物なんか作れると思うの?お前は、今はまん丸だと思っても、今度は半分になるし、その次にはまた三日月になるもの」このように、気まぐれな人には、その人に合うものがありません。どんなに素晴らしいものを与えても、すぐに気に入らなくなってしまうからです。 Vocabulary List: With Furigana: ある時とき、月つきの女め神がみが母親ははおやに頼たのんで、 体からだにぴったり合あう着き物ものを作つくって欲ほしいと言いいました。 すると、母親ははおやは言いいました。 「どうして、ぴったりする着き物ものなんか作つくれると思おもうの? お前まえは、今いまはまん丸まるだと思おもっても、 今こん度どは半分はんぶんになるし、 その次つぎにはまた三み日か月づきになるもの」 このように、気きまぐれな人ひとには、その人ひとに合あうものがありません。 どんなに素晴すばらしいものを与あたえても、 すぐに気きに入いらなくなってしまうからです。

Japanese Short Story 36

鳥とり刺さしとシャコ 鳥刺しの家に、夜遅くお客さまが来ました。何もごちそうするものがないので、鳥刺しは飼っているシャコを捕まえて、しめ殺そうとしました。シャコは憤慨して、「あなたは、何て恩知らずでしょう。私はいつだっておとりになって仲間のシャコをおびき寄せて、あなたに捕らせてあげてるのに、それなのに私を殺す気ですか」それを聞いて、鳥刺しは言いました。「だから余計、お前を殺さなければならないんだ。何しろお前は、自分の仲間までひどい目にあわせるやつなのだから」自分の身内を裏切る人は、裏切られた人だけでなく、その人を引き渡した相手の目から見ても信用できない悪者だということを、このお話は教えています。 Vocabulary List: With Furigana: 鳥とり刺さしの家いえに、夜遅よるおそくお客きゃくさまが来きました。 何なにもごちそうするものがないので、鳥とり刺さしは飼かっているシャコを捕つかまえて、 しめ殺ころそうとしました。 シャコは憤慨ふんがいして、「あなたは、何なんて恩おん知しらずでしょう。 私わたしはいつだっておとりになって仲なか間まのシャコをおびき寄よせて、 あなたに捕とらせてあげてるのに、それなのに私わたしを殺ころす気きですか」 それを聞きいて、鳥とり刺さしは言いいました。 「だから余よ計けい、お前まえを殺ころさなければならないんだ。 何なにしろお前まえは、自じ分ぶんの仲なか間ままでひどい目めにあわせるやつなのだから」 自じ分ぶんの身み内うちを裏うら切ぎる人ひとは、裏うら切ぎられた人ひとだけでなく、 その人ひとを引ひき渡わたした相あい手ての目めから見みても信用しんようできない悪者わるものだということを、 このお話はなしは教おしえています。

Japanese Short Story 35

女おんなとメンドリ ある未亡人が、毎日タマゴを産むメンドリを飼っていました。感心なメンドリだから、もっとたくさんエサをやれば、1日に2回タマゴを産むかもしれないと、この人は考えて、その通りにエサの分量をぐっと増やしました。ところが、メンドリはそのために太り過ぎて、1日に1回もタマゴを産まなくなってしまいました。欲張ると、かえって今持っている良いものまでなくしてしまうと、このお話は教えています。 Vocabulary List: With Furigana: ある未み亡ぼう人じんが、毎日まいにちタマゴを産うむメンドリを飼かっていました。 感心かんしんなメンドリだから、もっとたくさんエサをやれば、 1日いちにちに2に回かいタマゴを産うむかもしれないと、この人ひとは考かんがえて、 その通とおりにエサの分ぶん量りょうをぐっと増ふややしました。 ところが、メンドリはそのために太ふとり過すぎて、 1日いちにちに1回いっかいもタマゴを産うまなくなってしまいました。 欲よく張ばると、かえって今いま持もっている良よいものまでなくしてしまうと、 このお話はなしは教おしえています。