Japanese Short Story

Japanese Short Story 54

ニワトリとネコ あるお百姓の家で飼っていたニワトリが、みんな病気になりました。ネコがこれを聞きつけて、お医者になりすまし、診察の道具を持ってやってきました。「ニワトリさんたち、おかげんはどうですか?」とネコが尋ねると、ニワトリたちは、「どこも悪くありませんよ。あなたが、そこからいなくなってくれれば」このように、賢い人たちは悪い人がどれほど親切そうな顔をしても、すぐに悪巧みを見抜いてしまうものです。 Vocabulary List: With Furigana: あるお百姓ひゃくしょうの家いえで飼かっていたニワトリが、みんな病びょう気きになりました。 ネコがこれを聞ききつけて、お医い者しゃになりすまし、 診察しんさつの道どう具ぐを持もってやってきました。 「ニワトリさんたち、おかげんはどうですか?」 とネコが尋たずねると、ニワトリたちは、 「どこも悪わるくありませんよ。 あなたが、そこからいなくなってくれれば」 このように、賢かしこい人ひとたちは悪わるい人ひとがどれほど親切しんせつそうな顔かおをしても、 すぐに悪巧わるだくみを見抜みぬいてしまうものです。

Japanese Short Story 53

メスネコとアフロディテ メスネコが、美しい人間の若者に恋をしました。でも、ネコのままでは相手にしてもらえないので、アフロディテの女神にお願いしました。「どうぞ、私を人間の女にしてください」アフロディテはあわれに思って、このネコをきれいな娘にしてやりました。そして、言いました。「姿形は人間になりましたが、性格までは、私には変えることができません。頑張って、人間の性格になるのですよ」「わかりました。必ず、人間の性格になります」そして人間になったメスネコは、人間の若者のところへ行きました。若者はこの娘を見ると、すぐに好きになって、自分の家に連れて行って結婚しました。二人が一緒の部屋で住んでいる時、アフロディテはネコが姿形だけでなく、性格までちゃんと人間の女になったかどうか確かめようとして、一匹のネズミをその部屋に忍び込ませました。するとネコは、人間の姿になっていることをすっかり忘れて、ネズミを追いかけました。これを見て、アフロディテは腹を立て、元のネコの姿に戻してしまいました。これと同じように、元々性格の悪い人間は見かけだけ変わっても、本性は簡単には変わらないものです。 Vocabulary List: With Furigana: メスネコが、美うつくしい人間にんげんの若者わかものに恋こいをしました。 でも、ネコのままでは相あい手てにしてもらえないので、 アフロディテの女め神がみにお願ねがいしました。 「どうぞ、私わたしを人間にんげんの女おんなにしてください」アフロディテはあわれに思おもって、 このネコをきれいな娘むすめにしてやりました。 そして、言いいました。 「姿形すがたかたちは人間にんげんになりましたが、性格せいかくまでは、 私わたしには変かえることができません。 頑がん張ばって、人間にんげんの性格せいかくになるのですよ」 「わかりました。必かならず、人間にんげんの性格せいかくになります」 そして人間にんげんになったメスネコは、人間にんげんの若者わかもののところへ行いきました。 若者わかものはこの娘むすめを見みると、すぐに好すきになって、 自じ分ぶんの家いえに連つれて行いって結婚けっこんしました。 二人ふたりが一緒いっしょの部屋へやで住すんでいる時とき、アフロディテはネコが姿形すがたかたちだけでなく、 性格せいかくまでちゃんと人間にんげんの女おんなになったかどうか確たしかめようとして、 一匹いっぴきのネズミをその部屋へやに忍しのび込こませました。 するとネコは、人間にんげんの姿すがたになっていることをすっかり忘わすれて、 ネズミを追おいかけました。 これを見みて、アフロディテは腹はらを立たて、 元もとのネコの姿すがたに戻もどしてしまいました。 これと同おなじように、元々もともと性格せいかくの悪わるい人間にんげんは見みかけだけ変かわっても、 本ほん性しょうは簡単かんたんには変かわらないものです。

Japanese Short Story 52

ハイエナ ハイエナは、一年おきにメスになったり、オスになったりする動物だと言われています。ある日、オスのハイエナが、メスのハイエナにひどい仕打ちをしました。メスは、くやしがって、「こんなことをするなら、覚えていなさい。もうじきあなたも、同じ目にあうことになるのだから」自分がもうじき、その係につくことがわかっている人が、今、その係についている人からいじめられた時は、このお話をするとよいでしょう。もちろん、本当のハイエナはメスとオスが変わったりしません。 Vocabulary List: With Furigana: ハイエナは、一年いちねんおきにメスになったり、オスになったりする動物どうぶつだと言いわれています。 ある日ひ、オスのハイエナが、メスのハイエナにひどい仕打しうちをしました。 メスは、くやしがって、 「こんなことをするなら、覚おぼえていなさい。 もうじきあなたも、同おなじ目めにあうことになるのだから」 自じ分ぶんがもうじき、その係かかりにつくことがわかっている人ひとが、 今いま、その係かかりについている人ひとからいじめられた時ときは、 このお話はなしをするとよいでしょう。 もちろん、本当ほんとうのハイエナはメスとオスが変かわったりしません。

Japanese Short Story 51

ハエたち 物置きの床に、ハチミツがこぼれていました。そこヘハエたちが飛んできて、ミツをなめ始めました。美味しくて、美味しくて、ちょっとなめただけで、やめる気にはなれません。夢中になってなめているうちに、ミツが足に絡みついて、飛び立てなくなってしまいました。もがけばもがくほど、ミツが体中について、しまいに息ができなくなりました。ハエたちは、言いました。「なさけないことだ。ひとときの楽しみのために、死んでしまうなんて」この通り、食いしん坊は色々な不幸の元になります。食べ過ぎ、飲み過ぎには、気をつけてください。 Vocabulary List: With Furigana: 物もの置おきの床ゆかに、ハチミツがこぼれていました。 そこヘハエたちが飛とんできて、ミツをなめ始はじめました。 美味おいしくて、美味おいしくて、ちょっとなめただけで、 やめる気きにはなれません。 夢む中ちゅうになってなめているうちに、ミツが足あしに絡からみついて、 飛とび立たてなくなってしまいました。 もがけばもがくほど、ミツが体中からだじゅうについて、 しまいに息いきができなくなりました。 ハエたちは、言いいました。 「なさけないことだ。 ひとときの楽たのしみのために、死しんでしまうなんて」 この通とおり、食くいしん坊ぼは色々いろいろな不ふ幸こうの元もとになります。 食たべ過すぎ、飲のみ過すぎには、気きをつけてください。

Japanese Short Story 50

ノミとウシ ある日、ノミがウシに尋ねました。「一体全体、人間はあなたにどんな親切をしてくれたっていうの。あなたみたいに大きくて強い動物が、毎日、人間のために働くなんて、どうかしているわ。私をご覧なさい。私は人間なんか、ばりばり肉を食い破って、がぶがぶ血を吸ってやるのよ。うふふふっ」するとウシは、「僕は人間たちに感謝してるんだ。いつも僕を可愛がって大事にしてくれているし、ひたいや背中を、たびたびさすってくれるもの」「ひえーっ。あなたはさすられるのが好きなの?! 私は人間の手でさすられたら、もうおしまいのペチャンコだわ!」口先だけの強がりは、あんまり利口でない相手にさえ、すぐにやり込められてしまうものです。 Vocabulary List: With Furigana: ある日ひ、ノミがウシに尋たずねました。 「一体全体いったいぜんたい、人間にんげんはあなたにどんな親切しんせつをしてくれたっていうの。 あなたみたいに大おおきくて強つよい動物どうぶつが、毎日まいにち、 人間にんげんのために働はたらくなんて、どうかしているわ。 私わたしをご覧らんなさい。私わたしは人間にんげんなんか、ばりばり肉にくを食くい破やぶって、 がぶがぶ血ちを吸すってやるのよ。うふふふっ」 するとウシは、 「僕ぼくは人間にんげんたちに感謝かんしゃしてるんだ。 いつも僕ぼくを可愛かわいがって大だい事じにしてくれているし、 ひたいや背せ中なかを、たびたびさすってくれるもの」 「ひえーっ。あなたはさすられるのが好すきなの?!  私わたしは人間にんげんの手てでさすられたら、もうおしまいのペチャンコだわ!」 口先くちさきだけの強つよがりは、あんまり利り口こうでない相あい手てにさえ、 すぐにやり込こめられてしまうものです。

Japanese Short Story 49

イヌとライオンの皮かわ イヌがライオンの皮を見つけて、それをずたずたに破りました。それを見たキツネが、イヌに言いました。「もし、このライオンが生きているとすれば、その爪のほうがお前たちの歯よりも強いんだぞ。皮で良かったな」力や名誉ある人が、その力や名誉を失うと、今まで尊敬してくれていた人たちにもバカにされます。 Vocabulary List: With Furigana: イヌがライオンの皮かわを見みつけて、それをずたずたに破やぶりました。 それを見みたキツネが、イヌに言いいました。 「もし、このライオンが生いきているとすれば、 その爪つめのほうがお前まえたちの歯はよりも強つよいんだぞ。皮かわで良よかったな」 力ちからや名めい誉よある人ひとが、その力ちからや名めい誉よを失うしなうと、 今いままで尊敬そんけいしてくれていた人ひとたちにもバカにされます。

Japanese Short Story 48

お百姓ひゃくしょうと息子むすこたち あるお百姓が、年を取って死ぬ日も近くなったので、死ぬ前に自分の子供たちに、お百姓の仕事をしっかり覚えさせたいと思いました。そこで息子たちを呼んで、こう言いました。「お父さんは、もうじきこの世におさらばするがな、お前たちは、わしがブドウ畑に隠しておいたものを探してみるといい。きっと、いいものが見つかるから」息子たちはてっきり、父親が宝物をどこかに隠したのだと思いましたから、父親が死ぬとブドウ畑をすみからすみまで深く掘り返しました。しかし、掘っても掘っても、宝物はさっぱり見つかりませんでした。でも、せっせと耕されたブドウ畑からは、いつもの年の百倍ものブドウがとれたのです。このお話は、人間にとって働くことこそ宝物であると教えています。 Vocabulary List: With Furigana: あるお百姓ひゃくしょうが、年としを取とって死しぬ日ひも近ちかくなったので、 死しぬ前まえに自じ分ぶんの子こ供どもたちに、 お百姓ひゃくしょうの仕し事ごとをしっかり覚おぼえさせたいと思おもいました。 そこで息子むすこたちを呼よんで、こう言いいました。 「お父とうさんは、もうじきこの世よにおさらばするがな、 お前まえたちは、わしがブドウ畑ばたけに隠かくしておいたものを探さがしてみるといい。 きっと、いいものが見みつかるから」 息子むすこたちはてっきり、父親ちちおやが宝たから物ものをどこかに隠かくしたのだと思おもいましたから、 父親ちちおやが死しぬとブドウ畑ばたけをすみからすみまで深ふかく掘ほり返かえしました。 しかし、掘ほっても掘ほっても、宝たから物ものはさっぱり見みつかりませんでした。 でも、せっせと耕たがやされたブドウ畑ばたけからは、 いつもの年としの百ひゃく倍ばいものブドウがとれたのです。 このお話はなしは、人間にんげんにとって働はたらくことこそ宝たから物ものであると教おしえています。

Japanese Short Story 47

アリ アリは、むかしは人間でした。その人はお百姓でしたが、自分の畑でできるものだけでは満足しないで、隣近所のお百姓の畑の作物を羨ましがって、しょっちゅう盗んでいました。ゼウスの神は、「こんな欲張り人間は、許せない!」と怒って、この人を私たちがアリと呼ぶ生き物に変えてしまったのです。けれどもこの人は、アリに姿が変わっても、性格は変わりませんでした。その証拠に、いつでもあちらこちらの畑を歩き回って、よその人のオオムギやコムギを拾っては、自分のために貯め込んでいます。生まれつき悪い人は、どんなにひどく罰せられても、その性質が変わることはないということを、このお話は示しています。 Vocabulary List: With Furigana: アリは、むかしは人間にんげんでした。 その人ひとはお百姓ひゃくしょうでしたが、自じ分ぶんの畑はたけでできるものだけでは満足まんぞくしないで、 隣となり近所きんじょのお百姓ひゃくしょうの畑はたけの作物さくもつを羨うらやましがって、しょっちゅう盗ぬすんでいました。 ゼウスの神かみは、「こんな欲よく張ばり人間にんげんは、許ゆるせない!」と怒おこって、 この人ひとを私わたしたちがアリと呼よぶ生いき物ものに変かえてしまったのです。 けれどもこの人ひとは、アリに姿すがたが変かわっても、性格せいかくは変かわりませんでした。 その証しょう拠こに、いつでもあちらこちらの畑はたけを歩あるき回まわって、 よその人ひとのオオムギやコムギを拾ひろっては、自じ分ぶんのために貯ため込こんでいます。 生うまれつき悪わるい人ひとは、どんなにひどく罰ばっせられても、 その性質せいしつが変かわることはないということを、このお話はなしは示しめしています。

Japanese Short Story 46

造船所ぞうせんじょのイソップ イソップは、ある日暇つぶしに、造船所に寄ってみました。造船所の職人たちは、変な人が来たと思って、「悔しかったら、何とか言ってみろ」と、わいわいからかいました。そこでイソップは、こんな話をしたのです。「昔々、まだこの地球が形もなくて、水しかなかった時のことです。ゼウスの神は、水だけでは困ると考えて陸を呼びました。そして、『これから3回に分けて、この地球全体にある海の水を飲みなさい』と、言いつけました。陸はさっそく、仕事にかかりました。1回目に、ぐーっと飲むと、山が出てきました。それから2回目に、ぐーっと飲むと、平野が現れました。というわけだから、今度3回目に陸がぐーっとやれば、海はなくなってしまうから、あなた方も仕事がなくなるわけですよ」このお話は、自分よりも頭の良い人をからかうと、ひどいしっぺ返しをくらうということを教えています。 Vocabulary List: With Furigana: イソップは、ある日ひ暇ひまつぶしに、造船所ぞうせんじょに寄よってみました。 造船所ぞうせんじょの職しょく人にんたちは、変へんな人ひとが来きたと思おもって、 「悔くやしかったら、何なんとか言いってみろ」 と、わいわいからかいました。 そこでイソップは、こんな話はなしをしたのです。 「昔々むかしむかし、まだこの地ち球きゅうが形かたちもなくて、 水みずしかなかった時ときのことです。 ゼウスの神かみは、水みずだけでは困こまると考かんがえて陸りくを呼よびました。 そして、『これから3回さんかいに分わけて、この地ち球きゅう全体ぜんたいにある海うみの水みずを飲のみなさい』 と、言いいつけました。 陸りくはさっそく、仕し事ごとにかかりました。 1回いっかい目めに、ぐーっと飲のむと、山やまが出でてきました。 それから2に回かい目めに、ぐーっと飲のむと、平へい野やが現あらわれました。 というわけだから、今こん度ど3回さんかい目めに陸りくがぐーっとやれば、 海うみはなくなってしまうから、あなた方がたも仕し事ごとがなくなるわけですよ」 このお話はなしは、自じ分ぶんよりも頭あたまの良よい人ひとをからかうと、 ひどいしっぺ返がえしをくらうということを教おしえています。

Japanese Short Story 45

どちらが子こ供どもを余よ計けい産うむかでケンカするブタとイヌ ブタとイヌが、めいめい自分のほうがたくさん子供を産むと言い張って、ケンカをしていました。イヌが、「私は四つ足動物の中で、一番短い日数で子供を産むことができるのよ」と、言うと、ブタは、「いくら早く、たくさん産んだって、あなたの赤ん坊は、みんなまだ目が開いてないじゃないの」仕事は、早ければ良いとはかぎりません。ちゃんと、出来上がっていなければいけないのです。 Vocabulary List: With Furigana: ブタとイヌが、めいめい自じ分ぶんのほうがたくさん子こ供どもを産うむと言いい張はって、 ケンカをしていました。 イヌが、「私わたしは四よつ足あし動物どうぶつの中なかで、 一番いちばん短みじかい日数にっすうで子こ供どもを産うむことができるのよ」と、言いうと、 ブタは、「いくら早はやく、たくさん産うんだって、 あなたの赤あかん坊ぼうは、みんなまだ目めが開ひらいてないじゃないの」 仕し事ごとは、早はやければ良よいとはかぎりません。 ちゃんと、出来上できあがっていなければいけないのです。