人魚姫(4)
しかし、人魚姫はどうすることもできません。 ただ船の手すりにもたれているばかりでした。 その時、波の上にお姉さんたちが姿を見せました。 「魔女から、あなたのためにナイフをもらってきたわ。 これで王子の心臓を刺しなさい。 そしてその血を足に塗るのです。 そうすれば、あなたは人魚に戻れるのよ。」 人魚姫はナイフを受け取ると、王子の眠る寝室へと入っていきました。 「王子様、さようなら、私は人魚に戻ります。」 人魚姫は王子の額にお別れのキスをすると、 ナイフを一息に突き立てようとしました。 でも、人魚姫には、愛する王子を殺すことができません。 人魚姫はナイフを投げ捨てると、海に身を投げました。 波に揉まれながら人魚姫は、だんだんと自分の体が溶けて、 泡になっていくのがわかりました。 その時、海からのぼったお日さまの光の中を、 透き通った美しいものが漂っているのが見えました。 人魚姫も自分が空気のように軽くなり、 空中にのぼっていくのに気付きました。 「私はどこに行くのかしら。」 すると、透き通った声が答えます。 「ようこそ、空気の精の世界へ。 あなたは空気の精になって、世界中の恋人たちを見守るのですよ。」 人魚姫は自分の目から、涙が一滴落ちるのを感じながら、 風とともに雲の上へとのぼっていきました。 |
Vocabulary List:
Word | Reading | Meaning |
---|---|---|
人魚 | にんぎょ | mermaid |
姫 | ひめ | princess |
ただ | ただ | only |
船 | ふね | ship |
手すり | てすり | handrail |
もたれる | もたれる | to lean |
ばかり | ばかり | just |
その時 | そのとき | at that time |
波 | なみ | wave |
上 | うえ | up |
お姉さん | おねえさん | elder sister |
姿 | すがた | appearance |
見せる | みせる | to show |
魔女 | まじょ | witch |
あなた | あなた | you |
ナイフ | ナイフ | knife |
もらう | もらう | to get |
これ | これ | this |
王子 | おうじ | prince |
心臓 | しんぞう | heart |
刺す | さす | to sting |
そして | そして | and |
血 | ち | blood |
足 | あし | leg |
塗る | ぬる | to paint |
戻る | もどる | to return |
受け取る | うけとる | to receive |
眠る | ねむる | to sleep |
寝室 | しんしつ | bedroom |
入る | はいる | to enter |
さようなら | さようなら | goodbye |
私 | わたし | I |
額 | ひたい | forehead |
お別れ | おわかれ | farewell |
キス | キス | kiss |
一息に | ひといきに | in a breath |
突き立てる | つきたてる | to thrust |
でも | でも | but |
愛する | あいする | to love |
殺す | ころす | to kill |
投げ捨てる | なげすてる | to throw away |
海 | うみ | sea |
身を投げる | みをなげる | jump to |
揉む | もむ | to knead |
だんだんと | だんだんと | gradually |
自分 | じぶん | myself |
体 | からだ | body |
溶ける | とける | to melt |
泡 | あわ | foam |
わかる | わかる | to know |
のぼる | のぼる | to go up |
お日さま | おひさま | sun |
光 | ひかり | light |
中 | なか | in ~ |
透き通る | すきとおる | be transparent |
美しい | うつくしい | beautiful |
もの | もの | thing |
漂う | ただよう | to float |
見える | みえる | be able to see |
空気 | くうき | air |
軽い | かるい | light |
空中 | くうちゅう | in the air |
気付く | きづく | to notice |
どこ | どこ | where |
行く | いく | to go |
すると | すると | then |
声 | こえ | voice |
答える | こたえる | to answer |
ようこそ | ようこそ | welcome |
精 | せい | spirit |
世界 | せかい | world |
世界中 | せかいちゅう | in the world |
恋人 | こいびと | lover |
見守る | みまもる | to watch over |
目 | め | eye |
涙 | なみだ | tears |
一滴 | ひとしずく | a drop |
落ちる | おちる | to drop down |
感じる | かんじる | to feel |
風 | かぜ | wind |
ともに | ともに | with |
雲 | くも | cloud |
With Furigana:
しかし、人魚姫はどうすることもできません。 ただ船の手すりにもたれているばかりでした。 その時、波の上にお姉さんたちが姿を見せました。 「魔女から、あなたのためにナイフをもらってきたわ。 これで王子の心臓を刺しなさい。 そしてその血を足に塗るのです。 そうすれば、あなたは人魚に戻れるのよ。」 人魚姫はナイフを受け取ると、王子の眠る寝室へと入っていきました。 「王子様、さようなら、私は人魚に戻ります。」 人魚姫は王子の額にお別れのキスをすると、 ナイフを一息に突き立てようとしました。 でも、人魚姫には、愛する王子を殺すことができません。 人魚姫はナイフを投げ捨てると、海に身を投げました。 波に揉まれながら人魚姫は、だんだんと自分の体が溶けて、 泡になっていくのがわかりました。 その時、海からのぼったお日さまの光の中を、 透き通った美しいものが漂っているのが見えました。 人魚姫も自分が空気のように軽くなり、 空中にのぼっていくのに気付きました。 「私はどこに行くのかしら。」 すると、透き通った声が答えます。 「ようこそ、空気の精の世界へ。 あなたは空気の精になって、世界中の恋人たちを見守るのですよ。」 人魚姫は自分の目から、涙が一滴落ちるのを感じながら、 風とともに雲の上へとのぼっていきました。 |