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Japanese Short Story 17

人魚姫にんぎょひめ(4)


しかし、人魚姫はどうすることもできません。
ただ船の手すりにもたれているばかりでした。
その時、波の上にお姉さんたちが姿を見せました。
「魔女から、あなたのためにナイフをもらってきたわ。
これで王子の心臓を刺しなさい。
そしてその血を足に塗るのです。
そうすれば、あなたは人魚に戻れるのよ。」
人魚姫はナイフを受け取ると、王子の眠る寝室へと入っていきました。
「王子様、さようなら、私は人魚に戻ります。」
人魚姫は王子の額にお別れのキスをすると、
ナイフを一息に突き立てようとしました。
でも、人魚姫には、愛する王子を殺すことができません。
人魚姫はナイフを投げ捨てると、海に身を投げました。
波に揉まれながら人魚姫は、だんだんと自分の体が溶けて、
泡になっていくのがわかりました。
その時、海からのぼったお日さまの光の中を、
透き通った美しいものが漂っているのが見えました。
人魚姫も自分が空気のように軽くなり、
空中にのぼっていくのに気付きました。
「私はどこに行くのかしら。」
すると、透き通った声が答えます。
「ようこそ、空気の精の世界へ。
あなたは空気の精になって、世界中の恋人たちを見守るのですよ。」
人魚姫は自分の目から、涙が一滴落ちるのを感じながら、
風とともに雲の上へとのぼっていきました。

Vocabulary List:

WordReadingMeaning
人魚にんぎょmermaid
ひめprincess
ただただonly
ふねship
手すりてすりhandrail
もたれるもたれるto lean
ばかりばかりjust
その時そのときat that time
なみwave
うえup
お姉さんおねえさんelder sister
姿すがたappearance
見せるみせるto show
魔女まじょwitch
あなたあなたyou
ナイフナイフknife
もらうもらうto get
これこれthis
王子おうじprince
心臓しんぞうheart
刺すさすto sting
そしてそしてand
blood
あしleg
塗るぬるto paint
戻るもどるto return
受け取るうけとるto receive
眠るねむるto sleep
寝室しんしつbedroom
入るはいるto enter
さようならさようならgoodbye
わたしI
ひたいforehead
お別れおわかれfarewell
キスキスkiss
一息にひといきにin a breath
突き立てるつきたてるto thrust
でもでもbut
愛するあいするto love
殺すころすto kill
投げ捨てるなげすてるto throw away
うみsea
身を投げるみをなげるjump to
揉むもむto knead
だんだんとだんだんとgradually
自分じぶんmyself
からだbody
溶けるとけるto melt
あわfoam
わかるわかるto know
のぼるのぼるto go up
お日さまおひさまsun
ひかりlight
なかin ~
透き通るすきとおるbe transparent
美しいうつくしいbeautiful
ものものthing
漂うただようto float
見えるみえるbe able to see
空気くうきair
軽いかるいlight
空中くうちゅうin the air
気付くきづくto notice
どこどこwhere
行くいくto go
するとするとthen
こえvoice
答えるこたえるto answer
ようこそようこそwelcome
せいspirit
世界せかいworld
世界中せかいちゅうin the world
恋人こいびとlover
見守るみまもるto watch over
eye
なみだtears
一滴ひとしずくa drop
落ちるおちるto drop down
感じるかんじるto feel
かぜwind
ともにともにwith
くもcloud

With Furigana:

しかし、人魚姫にんぎょひめはどうすることもできません。

ただふねすりにもたれているばかりでした。

そのときなみうえにおねえさんたちが姿すがたせました。

じょから、あなたのためにナイフをもらってきたわ。

これでおう心臓しんぞうしなさい。

そしてそのあしるのです。

そうすれば、あなたは人魚にんぎょもどれるのよ。」

人魚姫にんぎょひめはナイフをると、おうねむ寝室しんしつへとはいっていきました。

おうさま、さようなら、わたし人魚にんぎょもどります。」

人魚姫にんぎょひめおうひたいにおわかれのキスをすると、

ナイフを一息ひといきてようとしました。

でも、人魚姫にんぎょひめには、あいするおうころすことができません。

人魚姫にんぎょひめはナイフをてると、うみげました。

なみまれながら人魚姫にんぎょひめは、だんだんとぶんからだけて、

あわになっていくのがわかりました。

そのときうみからのぼったおさまのひかりなかを、

とおったうつくしいものがただよっているのがえました。

人魚姫にんぎょひめぶんくうのようにかるくなり、

くうちゅうにのぼっていくのに気付きづきました。

わたしはどこにくのかしら。」

すると、とおったこえこたえます。

「ようこそ、くうせいかいへ。

あなたはくうせいになって、かいちゅう恋人こいびとたちをまもるのですよ。」

人魚姫にんぎょひめぶんから、なみだひとしずくちるのをかんじながら、

かぜとともにくもうえへとのぼっていきました。

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